La Marchande d'Amours


早いもので、2020年2月も間もなく終わろうとしています。

フロリレージュのオリジナルカレンダー、お楽しみいただいて

おりますでしょうか?

毎年、カレンダーには、それぞれの月のイメージに合う写真を選んでいます。

1月には、エピファニー Epiphanie キリスト教の公現祭に家族で楽しむ

Galette des rois ガレット・デ・ロワ とジュイで作った王冠の写真。

公現祭とは、東方の三賢者(三博士ともいわれます)が星に導かれて、

ベツレヘムの馬小屋で生まれたばかりの幼子エスを訪問、礼拝、贈り物を捧げたことを

記念して祝われる日で、フランスでは、大体1月6日前後の日曜日に、

家族みんなで、ガレット・デ・ロワを食べます。

ガレット・デ・ロワは「王様のお菓子」という意味。ロワは、roisと書きます。

つまり、ここでの王様 roi-sは複数形です。

なぜなら、この王様は、東方の三賢者を指すからです。

                          credit:Wikimedia Commons

東方の三賢者 les rois magesとは、ペルシアを代表する白髪長いひげの老人メルキオール、

アジア・インドを代表する青年のガスパール、

アラビアを代表する浅黒い肌の壮年バルタザールの三人を指します。

それぞれ、黄金、乳香、没薬を幼子イエスに贈ります。

上の絵の中でも、皆、手に贈り物を持っていますね。

おっとっと、前置きが長くなりました!

今日は、2月のカレンダーのお話を。

天皇誕生日もですが、やはりバレンタインデーがメインイベントの2月。

今年のカレンダーには、『クピドを売る女商人』という柄の生地を選びました。

クリニャンクールにスタンドを持つサンドリーヌさんから購入したものです。

中央の柄をアップにすると、

優美な白鳥二羽に囲まれた八角形の枠の中に描かれているのは、

愛のキューピッド・クピドを柵から出して、女主人に勧めるクピド売りの女性。

この柄をデザインしたのは、ルイ=イポリット・ルバ。

創業者オーベルカンフとともに、トワル・ド・ジュイ工場の黄金期を築いた

ジャン=バティスト・ユエ亡き後、デザインを任された画家のひとりです。

地の部分を幾何学模様で埋めるデザインは、ジュイ工場19世紀初めの

典型的なスタイル。

ジュイ美術館に所蔵されているこの柄は1817年のものです。

ジュイ工場が数多く生み出した人物柄は、

当時話題の出来事や、歴史的出来事、オペラや文学のシーンなど、

当時の社会を反映したものが多いのですが、

この斬新なテーマ『クピドを売る女商人』La Marchande d'Amoursも、

実は、当時の流行を敏感に映したものなのです。

18世紀後半、フランスをはじめヨーロッパでは、

ヴェスヴィオス火山の噴火により灰に埋まったポンペイ周辺の遺跡から

発掘される数々の遺物発見が大きな話題となり、

人々は、ギリシア・ローマ時代の高度な文明、芸術性の高い彫刻や壁画に

魅了され、古代ギリシア・ローマを模範とする作品・様式が生み出されるようになります。

これを新古典主義ネオ・クラシシズムと呼びますが、

そんな雰囲気の中、1863年のサロンに出展された作品がこちらです。

                          credit:wikipedia

ジョゼフ=マリ・ヴィアンによる『クピドを売る女商人』(フォンテーヌブロー宮殿美術館蔵)

この作品は、当時話題となり、版画として広く出回ったそうです。

こちらの作品のもととなったのが、こちら。

credit:naples-campanie.com

ポンペイから南西4,5㎞のスタビアエで発見されたLa Villa Ariannaの壁画です。

ルバが、ヴィアンの作品、または版画、スタビアエの壁画、いずれをもとに

デザインしたのかはわかりませんが、

ユエ、そしてオーベルカンフ亡き後も、

当時の流行を積極的に柄に取り入れる姿勢は、ジュイ工場の黄金時代のままで

あったことがよくわかります。

さて、もう一度、生地の柄に戻りましょう。

生地の右上、楕円形のメダイヨンの中に描かれているのも、

やはり愛の使いキューピッド(クピド)です。

こちらは、ギリシア神話に語られる『アモルとプシュケ』がテーマ。

アモルは、フランス語のAmourアムール、エロスともキューピッドとも

クピドとも呼ばれるヴィーナスの息子、愛の使者です。

美の女神ヴィーナスの嫉妬を買ってしまうほどの美貌の持ち主であるプシュケに、

女神の息子アモルが恋をする。この二人の恋人たちは、のちのオランピアでの

婚礼に至るまで、さまざまな試練を乗り越えなければならないのですが、

ここで描かれているのは、仮死状態にあるプシュケを、口づけで

生き返らせるアモル。

プシュケは、ギリシア語で「魂」という意味。魂を象徴する蝶の羽を背に

付けた姿でよく描かれます。

実は、この柄も、古代ギリシア・ローマ時代の作品をもとに

デザインされているのです。

それが、こちらの彫刻。古代ギリシア・ヘルニズム時代(紀元前4世紀)に

ブロンズで作られた作品を

古代ローマ帝国時代2世紀に大理石でコピーして製作されたものです。

(我々は美術館で目にする現在残っている古代ギリシアの彫刻の多くは、

ローマ時代に大理石で作られたコピーです。)

『アモルとプシュケ』(ウフィッツィ美術館蔵) credit:wikipedia

ローマのキャピトル美術館にも、同じテーマの彫刻が所蔵されています。

また、この『アモルとプシュケ』のテーマは、18世紀後半~19世紀初頭の

新古典主義の画家や彫刻家が好んで取り上げています。

『アモルの接吻で蘇るプシュケ』 (1787年 ルーブル美術館蔵)credit:Musée du Louvre

こちらのルーヴル美術館所蔵のアントワーヌ・カノーヴァの美しい彫刻は有名ですね。

おっと、また脱線してしまいました!

2月の生地に戻りましょう。

生地の右下、丸いメダイヨンの中には、『矢じりを研いでいるクピド』が描かれています。

つまり、『クピドを売る女商人』という生地は、

当時人々が魅了されていた古代ギリシア・ローマ作品の中でも、

愛の使者クピドをテーマに全体をデザインされたものなのです。

2月のカレンダーにぴったりですね♡

いろいろと脱線しましたが、

お楽しみいただけましたでしょうか?

3月のカレンダーに替わる前に、

ぜひ今一度、2月のカレンダーをじっくりの眺めてみてください。

『アモルとプシュケ』の物語は、とても魅力的ですが、

紆余曲折のある長いお話となりますので、

ご興味おありの方は、ぜひグーグルで検索してみてくださいね。

それでは、みなさま、

外出が心配な今日この頃ではありますが、

こんなときこそ、ジュイに囲まれて、おうちでハンドメイド。

どうぞ楽しい週末をお過ごしください。


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